エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい

しかも、十人以上は入れるような掘りごたつ式の座敷。
その疑問を望に聞こうとした時、座敷の扉が開いて営業部の人たちが男女問わずゾロゾロと入ってきて何事かと目を見開いた。

「お疲れー」
「羽山ちゃん、今日は飲もうぜ」
「遅くなってごめんね、琴葉ちゃん」

そんなことを言いながら営業部の人たちは、各々好きな場所に座る。
ちょっと待って、営業部の先輩や上司もいらっしゃるんですけど!

私と望は玩具メーカー『ジョイントイ』、子供向けの玩具やカプセルトイなどの企画や製造、および販売を行っている会社の営業事務だ。
アシスタントとして営業の数人を担当している。
一人から始まり、年数が増えるごとに担当人数も増えていき、今は五名を担当している。
電話の取次ぎ、見積書や請求書の作成、売上入力作業に会議資料作成などやることは多岐にわたる。
地道にコツコツやる作業が好きなので、事務は向いている仕事だと思う。
それはいいとして、どうして営業部の面々がいるんだろう?

「望、これはどういうこと?」
「いやー、山田さんに琴葉が彼氏と別れたってことをポロっと喋ったら、琴葉を励ましてあげようって言い出したんだよね。それで、琴葉に気づかれないように他の営業の人たちにも連絡を回そうってことになって」

乾杯の音頭を取った望に小声で追求したら、私の方を見てペロッと舌を出した。
ありがたいけど、こんなに大々的にやらなくてもよかったのに。

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