エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
第三章
「久住部長、先ほど大下玩具さんから電話があって玩具の発注数量をさらに追加したいらしく、また相談したいのでお手すきの時に連絡してくださいとのことでした。一応、電話番号は聞いているのですが」
私が電話を受けた時、打ち合わせで席を外していた久住部長に担当者と電話番号を書いたメモ用紙を差し出した。
「ありがとう、もらっておくよ」
淡々とした口調で答えていたけど、心なしか嬉しそうに見えた。
大下玩具というのは新規の取り引き先だ。
うちの営業スタイルは、ルート営業と新規営業の二種類がある。
ルート営業とは既に取り引きのある企業に対しての営業で、特に第一営業はルート営業に特化している。
すでに良好な信頼関係を築きながらも、しっかりとアフターフォローは必要不可欠。
営業担当者が、日々のコミュニケーションやヒアリングを重要視している。
第二営業はルート営業だけでなく新規営業も柔軟に取り入れていた。
新規開拓は企業の成長に繋がり、新たな顧客を獲得することで市場の拡大も図れ、売上増加も可能だ。
先日、大規模な玩具の商談会が開催され、国内の主要玩具メーカー約五十社が出展して各社の人気商品や新商品など多数出品していた。
小売店のバイヤー担当者などの厳しい目が光る中、うちからは久住部長を筆頭に営業陣が商談会に参加した。
そこで久住部長の営業能力の高さを改めて目の当たりにしたと、山田さんたちが口にしていた。