エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
「……莉子か」
「久しぶりね。元気にしてた?」
「まあ、それなりに」

にこやかに笑いかけている女性とは裏腹に久住部長はそっけなく対応しているように見えた。
お互いに名前を呼び合う仲ということは、もしかして二人は付き合っていたのかなという考えが浮かぶ。
その女性は手足が長く、スラリとした体形でモデルといっても過言ではないスタイルだ。
顔も整っていて、特に切れ長で迫力のある目が印象的。

「それなりにって何よ。相変わらずそっけないわね」
「大きなお世話だよ」
「もしかしてデート?」

目の前の女性が私の方に視線を向けてきて、頭からつま先まで値踏みするように見てくる。
ミルクティー色の髪の毛は綺麗に巻かれ、胸元の開いた身体のラインに沿った黒のワンピースを着ている。
スタイルがよくないと着れないようなデザインのものだ。
クラッチバッグを持つ手の爪は綺麗にネイルが施されていた。
 
「見ての通り。そっちはどうして日本にいるんだ?アメリカに住んでいただろう」
「離婚して一週間前に戻ってきたの」
「離婚?」
「ええ。晴れて独身になったから、その子に飽きたらまた付き合わない?」

ふふ、と楽しそうに笑いながら言う。
また?という言葉が引っ掛かった。
やっぱり、久住部長の元カノだったのか。
私にも元カレがいたので過去のことだからと割り切れるけど、実際に目の前に元カノが現れると複雑な気持ちになり、胸がチクリと痛む。
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