エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい

「今はもう関わりがないし、琴葉が心配することは何ひとつないから」

安心させるような優しい声色に不安が一気に解消されていく。
付き合ったふりではなく、実際に付き合っていたと言われたらちょっとモヤッとしたかもしれないけど。

「分かりました」
「じゃあ、行こうか」

久住部長は私の肩を抱いたまま歩き出した。

エレベーターは五階に止まり、『橋丸』という創作和食ダイニングに向かった。
元々人気の店だったのに、最近SNSで紹介されてさらに予約を取るのが難しい店になってしまった。
完全個室、半個室、テーブル席、カウンター席があり、いろいろな場面で利用可能な店だ。

「このお店って予約とるのが難しいって有名ですよね」
「ああ、そうらしいね。ここのオーナーと親しくさせてもらっているから融通が利くんだ」

お店に入る前に聞けば、久住部長はサラリと言い、店員に名前を名乗った。
そして『お待ちしておりました。こちらへどうぞ』と言って案内されたのは窓際の完全個室の席だった。

久住部長が注文してくれたのは、料理長のこだわりコース。
前菜、サラダ、お造り、揚げ物、茶わん蒸し、肉料理、ご飯もので構成されていて、デザートもついていた。
久住部長は芹くんから私が少食だということを聞いていたみたいで、途中で料理のシェアして半分食べてくれた。
そのお陰で、無事にデザートの一口サイズの抹茶ケーキまで食べれた。
すべて美味しくて大満足だ。
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