エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
久住部長のマンションに帰る途中、コンビニでお泊りセットなるものを購入した。
『こういう時にコンビニって便利だよね』なんて話しながらかごの中に必要なものを入れていく。
飲み物を手に取っていたら久住部長が無造作に四角い箱を入れ、それを見た瞬間、顔が赤くなった。
久住部長が『必要な物だからね』と言って笑い、私が持っていた飲み物とかごを取ってレジに向かった。
本当なら『私が買います』と言いたかったけど、あの四角い箱がそれを躊躇させた。
レジに立つのは学生だろう男性店員だったので、私はそそくさとコンビニの外に出て久住部長を待ったんだ。
コンビニで買ったものをテーブルの上に出す。
私のお泊りセットにガム、飲み物を順番に出し、最後に残ったのは例の四角い箱。
マイバッグの底にあり、取り出そうとしていたら上着を脱いでネクタイを外した久住部長が戻ってきた。
「お茶、冷やしておこうか」
「お願いします」
「あとさ、二人の時は名前で呼んでほしいんだけど。自分の家で仕事の時と同じように呼ばれるのは嫌だし、いつまでも部長呼びは距離を感じる」
嫌だと言われても……。
「昔は恭二くんて呼んでくれていただろ。ほら、呼んでみて」
私の両頬を手で包み込みながら催促してくる。
顔が近いんですけど!
「き、恭二くん」
「うん、琴葉に名前で呼ばれるのはいいね」
久しぶりに名前で呼ぶと、恭二くんは嬉しそうに微笑んだ。