エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
「あと、敬語もなしね」
「努力しま……するね」
職場で仕事の話しかしたことがなかったし、敬語抜きで話すのは少し緊張するかもなんて思いながらお茶を渡した。
恭二くんがキッチンに行った隙に避妊具の入った箱をこっそりテーブルの端に置いた。
アレを買うってことは、つまりはそういう行為をするかもしれないわけで。
ふと、そういえばこの前も使ったよなと思い出した。
あの夜、どうしてアレがあったのかなんて考えればすぐに分かることだ。
私以外の人とそういうことをしていたから持っていたんだろう。
複雑な気持ちになっていたら、恭二くんが私の隣に座った。
「ボーっとしてどうした?なにか気になる……ああ、あれね」
何かを察したのか、恭二くんはテーブルの上の箱を触る。
「前の時に買ったやつもまだ残っているけど、念のために新しく買ったんだ。さすがに無責任なことは出来ないからね」
「あれは以前からあったんじゃ……」
「違うよ。琴葉が寝ている時に買いに行っていたんだ。好きな子が無防備に寝ている姿を見て何もしない保証はなかったからね。結果、買いに出てよかったけど」
正直に答える恭二くんの言葉に顔が赤くなる。
それと同時に、さっきまで抱えていた負の気持ちが解消されていく。
「他に心配なことはない?」
私の頬を優しく撫でる恭二くんの手に自分の手を重ねて「はい」と返事した。
すると、恭二くんは顔を近づけてきて私の唇にキスをした。