エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
何度も触れ合わせるようなキスをしていたら、うっすらと開いた唇の隙間から舌が差し込まれる。
歯列を割って口内に侵入してきた舌は、縮こまっていた私の舌を見つけ出して絡め取られた。
貪るようなキスに私の身体の奥に熱が灯る。 
耳朶を指で触りながら舌の根をきつく吸い上げられ、背筋がゾクリと粟立った。

恭二くんとのキスはどうしてこんなに気持ちがいいんだろう。
巧みな舌遣いに翻弄され、頭の芯が痺れて思考が奪われる。

「はぁ……」

ようやく解放された唇から熱い吐息が漏れた。

「そんな可愛い顔、元カレにも見せていたなんて妬けるな」

無意識に目を潤ませて恭二くんを見上げていたらそんなことを言われる。
幹也とのキスで気持ちいいと感じたことはない。
寧ろ、私の方が恭二くんの元カノたちに嫉妬してしまう。

「そんなの、私の台詞だし……」

視線を逸らしながらボソリと呟く。
歴代の恭二くんの彼女のことなんて考えたくないのにモヤモヤが募る。

「琴葉、もしかして嫉妬してるの?」
「するに決まってます。元カノにもこんなに気持ちのいいキスをしていたのかと思ったら羨ましく……あっ、」

勢いのままそんなことを口走ってしまい、手で顔を覆った。
どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。
自分の正直な気持ちとはいえ、やからしてしまって大反省だ。
この口、縫い付けたい!
元カレの時なんて一度も嫉妬したことがなかった。
いつも私が嫉妬するのは恭二くん絡み。
恭二くんに彼女が居ると聞かされた時以来、今回で二度目だ。
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