エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
『どうして?』
『どうしても。琴葉には俺がいるからね』
『ん?』

芹の言葉の内容が理解できずに首を傾げる琴葉。
それを見て芹は『可愛いが過ぎる』と胸を手で押さえながら呟いていた。
以前からうすうす感じていたが、コイツはシスコンなのか?
芹の普段の姿と違い過ぎてドン引きだ。

『母さん、俺の部屋にもお菓子持ってきてもらっていい』
『ケーキは琴葉が食べちゃったからクッキーでいいなら』
『うん。母さんの手作りクッキーは美味いから』
『ふふ、ありがとう。後で持っていくわ』
『よろ~。恭二、行こう』
『ああ』

芹に連れられ、リビングを出ようとした俺に『きょうじくん、バイバイ』と言って琴葉が可愛らしい笑顔で手を振ってきた。
『バイバイ……』と、ぎこちなく手を上げて挨拶した俺をなぜか芹が睨んできて思わず肩を竦めた。

これが琴葉と初めて言葉を交わした時のことだ。
それから何度か芹の家に遊びに行った時に琴葉が出迎えてくれたりして話すようになっていた。

そして一年後に参加したホームパーティーで琴葉にプロポーズされたんだ。

そのホームパーティーは、主催が大手総合建築会社『桜庭グループ』の社長で普通のパーティーとは規模が桁違い、ホテルの会場を貸し切っていた。
大手企業の経営者家族の交流を目的に開かれたと聞いていた。
父親は仕事の話はもちろん、子育ての話もしていたらしい。
母親はそこで気の合う親しい友人が出来たと言って喜んでいた。

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