エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
家族同士の交流ということは、当然幼い子供たちも数多くいた。
会場で子供たちがじっと出来るはずもなく。
そういったことも見越して子供たちには、パーティー会場近くの小宴会場を遊べるスペースとして用意していた。

そこにはホテルのスタッフも数人待機していて、親たちは安心して子供を任せていた。
遊び疲れた子供を寝かせられるように簡易ベッドまであり、至れり尽くせりの空間だった。

そこで芹とその弟の柊斗はうちの会社の新作対戦ゲームに夢中で遊んでいた。
友人が自分の親の会社のゲームで遊んでいる姿を見て誇らしい気持ちになっていた。
ふと、ウサギのぬいぐるみを持った琴葉に近づくピンクのフリフリのワンピースを着た女の子を視界に捉えた。
琴葉と同い年ぐらいかな、なんて思っていたらとんでもない瞬間を目にしてしまった。

『そのウサギ、るかのだから』

その子は琴葉が持っていたぬいぐるみを奪った挙句、突き飛ばした。
それに気づいた女性スタッフが声をかけた。

『あなた、何をしているの？喧嘩は駄目でしょ』
『ケンカなんてしてないよ。るかのぬいぐるみをかえしてもらっただけだもん』

凶暴なピンク女はそう言うと奪ったウサギを手に持ってその場を離れた。

『大丈夫？』
『うん……』
　
女性スタッフに支えられて立ち上がった琴葉は部屋の隅に向かって歩いていた。
彼女のしょんぼりした後ろ姿があまりにも可哀想に見えた。
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