エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
『せっかく?こっちは別に会いたいとは思っていないし俺と三条さんは無関係だ。見かけたからと言って気安く話しかけないでもらいたい。友達と飲んでいるんだから邪魔しないでくれ』
三条の娘の腕を払い、目の前のジントニックを飲み干す。
『前にも言ったけど、付きまとうのはやめてくれ』
『そんなことしていませんよ。ここで会えたのも偶然です』
『じゃあ、先日うちの会社の前で話しかけてきたのも偶然だというのか?』
『ええ。たまたまあの辺を歩いていたら恭二さんを見かけたんです』
『たまたま?夜の八時半過ぎにか?嘘をつくならもう少しまともなことを言え。それと、俺のことを名前で呼ばないでくれ。不愉快だ』
自己中の勘違い女と話していたら頭痛がしてくる。
これ以上、貴重な時間を奪われたくないのでハッキリさせるか。
『あんたは俺に何を求めているんだ?』
『前にもお話したと思うんですけど、私と付き合ってほしいんです』
『こっちも前に言ったと思うけど、俺には付き合っている人がいる。その人と結婚も考えているから、何度そんなことを言われても無理だ』
『結婚?羽山琴葉の何がいいのよ!私のどこがあの女に劣っているの?』
態度が急変し、怒りを孕んだ表情でドンとカウンターテーブルを叩いた。
突然の豹変には驚いたが、ここでは完全に場違いだ。
さっきからカウンターの中にいるバーテンダーが困惑の表情を浮かべている。