エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい

今まで御曹司に言い寄って振られたらすぐに次のターゲットを見つけていた。
だから俺が付き合っている人がいると言ったらあっさり諦めて次に行くと思っていた。
それなのに、いつまでたっても俺の周りをうろついていたのは琴葉から俺を奪いたかっただけなんだ。
あのパーティーで琴葉からぬいぐるみを奪ったように。

『あのさ、琴葉は楽にピアノのコンクールで入賞したり受験に合格したわけじゃない。コンクールの前は家で何時間もピアノの練習をしていたみたいだし、中学受験の時には家庭教師をつけて毎日勉強していた。あんたも努力したかもしれないけど、琴葉だって努力していたんだ。勝手にマイナス思考に陥って悲劇のヒロインぶるな』

イライラして言わずにはいられなかった。

芹から琴葉のことはよく聞かされていた。
自分たちが中高一貫の女子校がいいと言い出した結果、琴葉が中学受験することになり勉強漬けになってしまい、あの時は申し訳なかったと言っていた。

琴葉は最初から何でも出来るわけではない。
彼女はいつも努力していたんだ。
そのことも知らずに好き勝手なことを言わないでほしい。
誰に比べられたかは知らないが、それで琴葉を敵視するのは間違っている。

三条の娘は俺ではなく琴葉に執着していたんだ。
< 84 / 114 >

この作品をシェア

pagetop