エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
「ちょっと恭二くんの観察を」
「なんだよそれ」

クスクスとおかしそうに笑う。
こんな柔らかに笑う顔が見れるのは彼女の特権だよなとしみじみ思う。

「今日はどこに行くの?」

デートに誘われたけど、出来れば動きやすい恰好でと言われただけで詳しいことは聞いていない。

「琴葉、果物が好きだろ。昔、フルーツケーキとかよく食べてたから時期的にぶどう狩りでもどうかなと思って」
「え、行きたい!シャインマスカットとかあるのかな」
「あるよ。その農園にはカフェがあってフルーツパフェとかいろいろ食べれるんだ」
「ホントに?わぁ、楽しみだなぁ」

興奮気味に話す私を見て恭二くんが目を細めて笑った。
私が果物好きということを覚えてくれていた上で、今日の予定を組んでくれていたことに嬉しくなる。

「よかった。事前に農園に予約を入れていたから琴葉に嫌だと言われなくてよかったよ」
「嫌だなんて言うわけないよ。それに恭二くんと一緒ならどこにでも行くよ」
「エッチなホテルでも?」
「……っ!」

今のは空耳じゃないよね?
まさかの発言に私は顔を赤くしながら恭二くんを見ると彼はプッと噴き出した。

「冗談だよ。そんなに顔を真っ赤にしなくてもいいのに」
「もう!真顔でそんなこと言われたら顔も赤くなるよ」

顔が熱くなって手でパタパタと仰いでいたら、信号待ちになり、恭二くんがなぜか不安そうな表情で私を見た。

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