キスってなに?魔女の恋愛論・オルロフとエリーゼ・魔法の恋の行方シリーズ1

湖のほとりの小屋・19時

<湖の畔の小屋・19時>

「そのハグってやつは、いくらするの?」

オルロフは、その発想に声をたてて笑った。

本当にこの妖精はヘンテコで、とびっきりかわいらしい。

「金じゃない。挨拶のひとつなんだ。
心配な時とか、落ち込んでいるときとか、悲しい時とか・・ハグをしてもらうと安心できる」

妖精はグラスを持って、ちょっと考える様子で

「でも、その<ハグ>ってやつをやっても、なんの解決にもならないわよね」

やはり妖精は合理的な思考をする。

「確かに君の言う通りだ。でも、自分の気持ちが落ち着けば違う。
自分がひとりでないってわかれば、立ち向かう勇気がでる」

オルロフは考えていた。

もう、一押しだ。
しかし、焦って台無しにはしたくない。

妖精は考え込むように首を傾げた。

「グスタフ皇国について、家庭教師はそんなことを説明しなかったわ。
勇気を与えるって、魔法の呪文のようなものなのかしら」

あせるな、あせるな!
オルロフは自分の心に言い聞かせていた。

妖精はすぐそこまで来ている。
ついにオルロフは仕掛けた!

「試してみる?・・君が不安ならば・・・・
君はグスタフの人でないから、勇気はでないかもしれないけれど」

指先を組み合わせて、それとなく妖精の様子を伺う。

「うーん、そうねぇ、親しい挨拶って言ったわよね」
妖精はまた考え中だ。

ここは魔女の国だ。
何が起こるかわからない。

もし何かあれば、この妖精は俺の事を豚に変えるかも・・しれないぞ。
ここはちゃんと説明責任を、果たした方がいい。

「俺の国では男同士でも、女同士でもハグをやるんだ。
親子でも、友達でも・・親愛の情をこめてね。
お互い体を密着させて、抱き合う・・それが<ハグ>だ。」

妖精はオルロフの熱意にちょっと押されたようで

「私たち、こんなにお話できたのって・・お友達になったのかしら」

オルロフは心の中でガッツポーズをした。
ついに妖精は罠に入った!!
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