キスってなに?魔女の恋愛論・オルロフとエリーゼ・魔法の恋の行方シリーズ1
大きなサファイアが中央にはめ込まれ、周囲をダイヤと真珠で紋章を形作っている。

グスタフ皇国の紋章。

国王の継承者が持つペンダント。

妖精はひゅっと息を飲み、もう一度オルロフの顔を見た。

そして、唇をかみしめた。
すぐに何とかしなくては・・・

「これは一夜の夢、かなわぬ夢、残酷な夢」

<君を連れて、ここを出よう>

オルロフのあの言葉、二人で紡ぐ未来への翼は、最初から折られていたのだ。

妖精が急いで寝室から出ると、暖炉の火がまだ残っていた。
薬草リキュールの空瓶とグラスが、テーブルの上で転がっている。

急いで暖炉の火に灰をかぶせて始末をした後、籐かごに空瓶とグラスを突っ込んだ。


昼過ぎ、オルロフは目が覚め、周囲を見回した。

大きなすずかけの木の根元で、寝ている自分。
服も着ているし、荷物もある。

「エリーゼッ!!??」
周囲を見回しても、小屋も湖も何もない。

すぐ脇の道、その向こうの土手で、羊たちがのんびりと草を食んでいる。

すべては跡形もなく消えていた。
夢のように・・いや夢だったのか?



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