キスってなに?魔女の恋愛論・オルロフとエリーゼ・魔法の恋の行方シリーズ1

湖のほとり・16時30分


<湖・16時30分>

「もう、いいわ!・・指輪はあきらめる!」
オルロフはもう一度、振り返った。

金の髪の人は、水の中にたたずんでいるかに見える。
水がほとほとと、滴り落ちている。

その姿はまるで、湖に漂う花の妖精。
はかなくて、抱きしめたら、花の香りで苦しくなりそうで・・

オルロフの怒りは、風と共に吹き飛んでしまった。

妖精は、オルロフと視線を合わせず、横を向いて口を尖らせた。

「・・ごめんなさい・・悪かったわ。あなたを巻き添えにしてしまって・・」

「水の中は滑る。危ない」

オルロフは、手を差し出したので、妖精はそっと手をのせた。

そうしてオルロフが先に歩き、二人はなんとか岸にたどり着いた。

オルロフは、その手をもっと握っていたかったが、岸につくと、妖精はすぐに振りほどいた。

「そばに小屋があるの。暖炉で服を乾かすわ。あなたにも迷惑をかけたし」

妖精はさっさと先を歩くので、オルロフはびしょ濡れの犬のように後をついていった。
少し歩くと、小さな丸太組の小屋が見えた。
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