拾った相手は冷徹非道と呼ばれている暴君でした
「あ、起きました?」
「……お前……!」
「まあ、そんなに睨まれたら怖いわ」
ゆっくり瞼を上げた男は暫くぼんやりしてた後、エレナの顔を認識してカッと目を見開く。
しかしそれなりに重症の身体なせいで起き上がることができずに、そのままベッドへと再び沈んでいった。
「丸一日、目を覚まさなかったんですよ。医者は呼んでほしくないようでしたので呼んでいません」
エレナは湯を沸かしながら、状況を説明する。箱から乾燥させた薬草を一つ取り出して、すり潰していく。
この薬草も以前、町の子供が熱を出した時に煎じたことがあり、結構評判が良かったものだ。
軽いスープと共にベッドの横にある小さなテーブルへ置いた。
「宜しければどうぞ。お腹空いてますよね?」
エレナは声を掛ける。しかし男は一瞥しただけで手をつけることなく、ふいっと顔を逸らした。
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