恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

第1話 聖剣の乙女

「君が聖剣の乙女か……」
「なんと言うか、こんなんですみません」

 真面目で知られるイケメン勇者は、面倒くさそうな表情を隠そうともせず重いため息をついた。
 アメリ自身、望んで選ばれたわけではない。だが冴えないソバカス女を差し出された勇者様の困惑も、分からないでもなかった。

「いや君の年齢がどうとかそういうことではない」

 造作のことには触れずにうまく濁したつもりだろうか。
 しかし乙女というにはとうのたちすぎたアメリには、十分すぎるくらいの威力があった。

「そんなことより本当にいいのか?」
「いいのかと言うと?」
「だから聖剣の乙女になるということだ」

 勇者――ロランの苛立ちに、アメリは何を今さらと首をかしげた。

「いいも何も、わたしに選択権はないんでしょう? だったら考えるだけ無駄なんじゃ」
「それはそうだが……」
「はいはい、初めましての挨拶はそのくらいにして、さっそく聖剣を確かめさせてもらえるかな?」

 脇にいた魔導士が急かすように言った。勇者とはまた違ったタイプだが、この魔導士もかなりのイケメンだ。
 それどころか魔王討伐に選ばれたメンバーは、誰も彼も美男美女ばかりだ。そんなに中に自分が混ざったことが、アメリは未だに信じられないでいる。

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