恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

第6話 勇者の部屋

 薄暗い部屋でロランは眠っていた。
 シャツがはだけた腹部には包帯が巻かれ、ところどころ血がにじみ出している。

「あの、勇者寝てるみたいだし、勝手に入ったりしちゃまずいんじゃ?」
「大丈夫大丈夫」

 戸惑うアメリを、ヴィルジールは半ば無理やり奥へと引き入れた。
 かと思うと、自分はすぐに部屋を出ていこうとする。

「じゃあアメリ、ロランのことしっかり癒してあげて」
「え? 癒すってどうやって?」

 慌ててヴィルジールを引き留めた。
 アメリは医者でもなければ、サラのように治癒魔法も使えない。

「官能だよ」
「カン……ノウ?」

 うまく言葉を変換できなくて、アメリは頭を傾ける。

「だから官能だってば。なぁに、簡単だよ。アメリが女性として性的快楽を得れば、ロランの怪我は綺麗さっぱり治るから」
「はぁ!?」
「そんな訳で、頑張って気持ちよくなって」

 そう言い残すと、その場からパッとヴィルジールの姿がかき消えた。

「頑張って気持ちよくなる……?」

 呆然と残された部屋の中、ロランのうめき声が小さく漏れた。

「勇者……?」

 恐る恐る覗き込むと、ロランは苦しげに目を閉じていた。
 額に浮かぶ玉のような汗にその辛さが伺える。
 ヴィルジールの言うことなど、まるで意味が分からなかった。
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