恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

第11話 変身

 連れていかれた先の一室で、アメリは何人もの女官に囲まれていた。

「これはやりがいがありそうな逸材ですね」
「ええ、久しぶりに腕が鳴りますわ」

 らんらんとした目つきの女官たちは、まるで獲物を狙うハンターのようだ。
 しり込みして、アメリはぎゅっと身を縮みこまらせた。

「あの、今から何を……?」
「王様にお会いする前に、身だしなみを整えていただきます」

 いちばん年配そうな女官にニッコリと言われ、それはそうかとアメリは力を抜いた。

「では、みなさん始めますよ。まずは湯あみからです!」
「えっ、ひゃっ、あの、なにをっ」

 抵抗も虚しく、あちこちから伸びてきた手に身ぐるみをはがされる。
 あっという間に素っ裸にされたアメリは、泡あわのバスタブに担ぎ込まれた。

「か、体、洗うんですよね。それくらい自分でできますから」
「いいえ、聖剣の乙女様。すべてわたしどもにお任せください」

 体を沈めた湯船の中で、左右から手を取られた。
 柔らかいスポンジで、丹念に体中を洗われる。

「なんてモチモチのお肌なの!」
「お胸はこの大きさにして、形がとってもお綺麗だわ!」
「髪は少し痛んでいますわね。でもご安心ください、とっておきの香油がありますから」
「口惜しいわ。討伐の旅に出られてなければ、毎日手入れして差し上げるのに!」
「みなさん! おしゃべりはいいから、きちんと手を動かしなさい!」

 そのあともマッサージに化粧と続き、髪を結って爪までピカピカに磨き上げられた。
 その間アメリはお姫様よろしく、ただ成すがままにされるしかない。終わるころにはぐったりしてきてしまって、無の境地で用意された衣装に袖を通した。

「いかがですか? 聖剣の乙女様」

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