恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。
第16話 討伐再開
魔王討伐の旅が再開されて、アメリもこの生活に随分となじんできていた。
魔物による被害の情報を集めつつ、街や村に立ち寄りながら魔王城を目指していく。
依頼された魔物退治を行うことも多いため、なかなかまっすぐ進まない旅の工程だ。今日も何とか魔物の群れを薙ぎ払って、ようやく宿屋に辿り着いた。
「今夜は案外まともな宿ね。あたし硬いベッドはもうこりごりよ」
「ここのところ安宿が続いたからな。まぁ、それでも野宿よりはマシってもんだ」
マーサとフランツは宿の交渉係だ。ふたりは旅の経験が豊富で、こういったことに慣れているらしい。
日によって部屋数も変わってくる。
勇者一行として宿で優遇されることも多いが、大概アメリはサラと同じ部屋になることがほとんどだった。
部屋割りが決まってそれぞれが部屋へと散らばっていく。アメリはやはりサラと一緒の部屋だ。
「聖剣の乙女」
部屋の手前でロランに呼び止められる。
「何か?」
「今日も特に怪我はないか?」
「ええ。何かあったらサラさんに見てもらうのでご心配なく」
「ああ、そうしてくれ」
それだけ言うと、ロランは部屋に引っ込んだ。
このやり取りは毎日のことだった。
「よかったわ。ロラン、最近はきちんとアメリさんのことを大事にしているみたいですね」
「別にそういうわけでは……わたしは勇者の剣を持ってるってだけですし」
ロランが話しかけてくるのは、朝の出発時と宿屋に着いたときの一日二回で、アメリの体調を伺うときだけだ。
剣の運搬係が怪我をしては、足手まといになり兼ねない。単純にそれを心配しているだけだろう。
証拠に、その時以外はアメリに対して、常によそよそしいロランだった。
魔物による被害の情報を集めつつ、街や村に立ち寄りながら魔王城を目指していく。
依頼された魔物退治を行うことも多いため、なかなかまっすぐ進まない旅の工程だ。今日も何とか魔物の群れを薙ぎ払って、ようやく宿屋に辿り着いた。
「今夜は案外まともな宿ね。あたし硬いベッドはもうこりごりよ」
「ここのところ安宿が続いたからな。まぁ、それでも野宿よりはマシってもんだ」
マーサとフランツは宿の交渉係だ。ふたりは旅の経験が豊富で、こういったことに慣れているらしい。
日によって部屋数も変わってくる。
勇者一行として宿で優遇されることも多いが、大概アメリはサラと同じ部屋になることがほとんどだった。
部屋割りが決まってそれぞれが部屋へと散らばっていく。アメリはやはりサラと一緒の部屋だ。
「聖剣の乙女」
部屋の手前でロランに呼び止められる。
「何か?」
「今日も特に怪我はないか?」
「ええ。何かあったらサラさんに見てもらうのでご心配なく」
「ああ、そうしてくれ」
それだけ言うと、ロランは部屋に引っ込んだ。
このやり取りは毎日のことだった。
「よかったわ。ロラン、最近はきちんとアメリさんのことを大事にしているみたいですね」
「別にそういうわけでは……わたしは勇者の剣を持ってるってだけですし」
ロランが話しかけてくるのは、朝の出発時と宿屋に着いたときの一日二回で、アメリの体調を伺うときだけだ。
剣の運搬係が怪我をしては、足手まといになり兼ねない。単純にそれを心配しているだけだろう。
証拠に、その時以外はアメリに対して、常によそよそしいロランだった。