恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

第2話 勇者御一行様

「あたし、武闘家のマーサ。よろしくね聖剣の乙女」
「俺は竜騎士フランツだ」
「わたしは神官のサラです。よろしくお願いします、アメリさん」

 次々に挨拶されてアメリは夢見心地だった。
 何しろ伝説の勇者御一行様だ。
 これに加えて勇者のロラン、黒魔道士のヴィルジールが魔王討伐に選ばれたメンバーだった。

「今度こそ本物の乙女なのよね?」
「紛れもなく正真正銘の聖剣の乙女だよ。ロランと僕が確かめたからね」
「これまで勇者目当ての女どもの虚偽申告がすごかったからなぁ」

 魔王討伐の旅の途中で、勇者の剣が折れてしまった。先代勇者のお下がりとかで、随分と劣化していたらしい。
 そこで新たな聖剣探しが始まった。

 この国では定期的に勇者が生まれて、魔王討伐の旅に出る。
 魔物が人間を襲って毎年多くの犠牲者を出していた。平和を取り戻すには、諸悪の根源である魔王を倒す必要があった。

 魔王の息の根を止められるのは勇者の聖剣だけとされている。
 その聖剣は本来、勇者の対となる乙女の体の中にあるのだが、今までは先代の残した剣があったため、ロランの乙女探しは後回しになっていた。

 と、ここまでがアメリが聞いた話だ。

「虚偽申告って……いちいちアレをして確かめたんですか?」

 思わずロランへと侮蔑の視線を向ける。
 いきなりファーストキスを奪われたのだ。そのくらいは許されるだろう。

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