恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

第20話 本心

 それからしばらくは、大きなトラブルもなく魔物討伐の旅が平穏に続いていた。
 相変わらずロランはアメリによそよそしくて、変に意識したアメリもロランに対して他人行儀に接してしまう。

 聖剣を取り出す儀式のキスだけが、アメリとロランをつなぐ接点だ。
 振り幅が大きすぎて、距離感が上手く測れない。
 そもそも自分自身がどうしたいのかも分からなくて、淡々と旅をこなすしかないアメリだった。

「アメリさん、疲れましたか?」

 口数が減っているアメリを気にしてか、サラが話かけてきた。

「いえ、大丈夫です。歩くのにも慣れてきましたから」

 今いる土地は起伏が激しくて、上り坂と下り坂の繰り返しで地味に体力を削られる。
 だからと言って簡単に()を上げるわけにもいかなかった。
 それでなくともアメリの遅いペースに合わせてもらっているのだ。これ以上お荷物にならないよう多少の無理くらいはしなくては。

「そういやさ。アメリ、最近はロランとうまくいってるみたいだね」
「はぁ、うまくいってるというか、別に普通です」

 この状況でどこをどう見たらそう見えるのだろうか。
 アメリはヴィルジールに胡乱げな視線を向けた。

「普通? そんなことないさ。ほら、最近のロランってば剣さばきがキレッキレじゃない? 魔物も瞬殺だし、僕も楽できて助かってるよ」
「それは勇者の努力の結果では? わたしとの仲とかまったく関係ない話です」
「関係ありありさ。前に言ったでしょ? 勇者(ロラン)の剣の威力は乙女(アメリ)の好感度で変わって来るんだってば」

 好感度の言葉に、アメリは思わず口ごもった。
 あの日ロランに触れられたドキドキを思い出してしまって、つい顔が赤らんでしまう。

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