恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。
 急速に悪化した魔物傷を思い出し、アメリは真剣にうなずいた。

「じゃあすぐに戻って支度を……」
「今はたいしたことないんだ。ここでいい」
「え、ここでって」

 ロランに顎を取られたかと思うと、顔を横に向けさせられた。
 そのままロランがアメリの耳元に唇を寄せてくる。

「ひゃっ、ゆ、勇者、なにを」
「すぐ終わる」
「あぁっん」

 ロランの舌がアメリの耳の這わされていく。
 そのままゆっくりと溝を辿られて、静かな厨房にアメリの甘い声が響いた。

「あ、勇者、こんなところで……」
「ここ、弱いだろう?」

 聞く耳を持たないロランは、アメリの耳を食みながら反対の首筋をソフトタッチでなぞってくる。
 ゾクゾクした感覚に抗えなくて、アメリはあっという間に腰砕けになった。

「見ろ。やはりすぐだったな」

 再び手の甲を見せられて、綺麗になった傷跡に甘い時間の終わりを知らされる。

「ふ、不意打ちはやめてください……」
「時間の節約だ」

 涙目で見上げても、ロランはどこか楽しそうに返してきた。
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