恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。
 頷くと、ロランは少し緊張した顔を向けてきた。

「次は違う形でやってみたい。協力してくれるか?」
「もちろん。で、わたしはどうすれば?」

 前のめりに返事をすると、なぜかロランは呆れ交じりの表情になった。

「まったく君は……もう少し人を疑うことを覚えた方がいい」
「え? だって勇者を疑ってどうするんですか?」

 ぽかんと問うと、片目を手で覆いロランは大げさにため息をついた。

「またそうやって……その無防備さが本気で心配になってくる」

 意味が分からずに首をかしげていると、ロランは壁際にあった細長い文机の上のものを無造作に片付けた。

「君はここにいてくれ」
「きゃあっ」

 いきなり脇を持ち上げられ、机の上に座らされた。
 おしりが乗ってちょうどいいくらいの幅で、アメリは壁に背を預けた状態だ。

「こ、ここで?」
「ああ、今夜は口でも試したい」

 真剣な顔で、ロランはアメリの服に手を掛けた。
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