恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

第3話 後悔

 森の中いきなり魔物に襲われて、アメリは早速この旅を後悔していた。
 とにかく自分は足手まといだ。逃げ惑っている間に囲まれてしまった。

「アメリさんは早くロランの元へ!」

 サラに援護されながら、ロランに駆け寄った。
 めちゃくちゃ怖い。
 ロランは勇者だ。先頭を切って魔物と戦っている場所に、突っ込んで行かなくてはならなかった。

「さぁ、乙女の出番だよ」
「おう、とうとう聖剣のお目見えか!」
「どんな剣かめっちゃたのしみぃ」

 各々戦いつつも、ギャラリーは余裕シャクシャクだ。
 こんな中、あの方法で聖剣を出すのだろうか。
 そう思うとアメリの足が途中で止まってしまった。

「何をしている、早く来い!」
「や、だって」

 言っている間にロランに二の腕をつかまれた。
 強引に引き寄せられて、噛み付くように口づけられる。

「いったぁあいっ」

 歯が折れんばかりにぶつかり合って、次いで掌に熱が集まった。
 耐えがたい痛みに悶絶している隙に、ロランがアメリから剣を抜き去っていく。

「もお、コレいやあぁああ!」

 自分から剣が出て行く瞬間が、なんとも言えず気持ち悪い。
 痛みもさることながら、慣れない感覚に悲鳴が漏れた。

「へぇ、コレが勇者の剣!」
「凄まじい威力だな!」
「コレなら僕ら楽できそうだね。ロラン頑張って〜」
「みなさん、ちゃんと援護をしてください!」

 台詞がひと回りする間に、魔物の群れはロランの手であっさり討伐され尽くしたのだった。
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