恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。
「いえ? 勇者は普通に丁寧ですよ?」
「だったらなんで? ロランほどの男に求められたら自信のひとつくらい簡単につきそうなのに」
「だから勇者は好きでわたしに触れているわけでは……」
「は? そんなわけないじゃん。アメリのおっぱい前にして我慢できる男なんていないわよ」

 マーサに乳首あたりをつつかれて、跳び退いた拍子に胸がゆさゆさ大きく揺れる。
 恥ずかしさに体を抱え込むと、マーサがケタケタと笑い出した。

「ほぉら、その反応、たまんないし。男なんて単純なもんよ? 下半身に血が集まったらそのことしか考えられなくなる馬鹿で可愛い生き物って感じだし」
「でも、勇者がわたしに触れるのは傷が治るまでだけですし……」
「え? もしかしてロラン、ずっと寸止め喰らってんの? あー、そいういうこと。よっぽどアメリが大事なんだ」

 むしろいつも寸止めされているのはアメリの方だ。
 意味が分からなくてアメリは訝しげな顔になった。

「とにかく、勇者はわたしに興味なんて持ってないんです」
「だったらさ、今度ロランにお願いしてみなよ」
「お願い? 何をですか?」

 ろくなことではなさそうだったが、とりあえずアメリは聞き返した。

「傷を癒したあとも最後まで続けてほしいって。それで断られたら今のアメリのコトバ、信じてあげる」

 ついでにロランをボコってあげるからと、楽しそうにマーサは拳をボキリと鳴らした。
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