恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。

第4話 勇者と乙女

「あり得ない」
「アメリさん……これも大事なお務めですから」

 恥ずかしさと残る痛みに膝を抱えていると、サラがやさしく慰めてくれた。
 ここは宿屋のふたり部屋だ。サラは白魔法を使って、騒ぎでできたすり傷を癒やしていく。

「ありがとうございます、サラさん」
「でも聖剣を出す方法が口づけだったなんて……」
「デスヨネ」

 戸惑うように言われて、アメリも遠い目をするしかない。

「ね、アメリさん。ロランのことどう思ってます?」
「どうって言われても……」
「ちょっと不器用だけど、ロランはいい人よ。だから怖がらないであげてほしいんです」
「はぁ」

 生返事をするとサラは困ったような顔をした。

「おかしいな〜、勇者と聖剣の乙女は惹かれ合うはずなのに」
「ヴィルジール!?」

 突然横に現れた魔導士に、サラが非難の声をあげる。

「魔法を使って女性の部屋に侵入するだなんて……! 魔導士協会の規律違反よ!」
「まぁまぁ、アメリのこの様子じゃ、今後の旅に支障を来すでしょ? いつロランが大怪我を負うかも分からないのに」
「それはそうだけれど……」
「荒療治だけどさ、ここはロランとアメリを一緒の部屋にしない? そしたら僕とサラが同じ部屋ね」
「馬鹿な事言わないで」
「なんでさ? サラは僕のコト嫌いなの?」
「嫌いに決まってるじゃない。って、論点はそこじゃないでしょう?」
「あの、どうしてわたしが勇者と同じ部屋なんかに……?」

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