恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。
「よっぽど退屈だったんですね……」

 ならば早く癒してあげなくてはと、アメリは大胆に服を脱ぎ捨てた。
 これまで全裸になって触れられたことはない。
 ぎゅっと目を閉じ、恥ずかしくても差し出すように胸を反らした。
 なのにやはりロランはアメリに触れようとしてこない。
 恐る恐る目を開くと、ロランは無言のままアメリの裸をじっと見つめていた。

「綺麗だ……」

 ロランはぽつりと言った。
 眩しそうに目を細め、アメリの腰のラインをゆっくりと指でたどっていく。
 動揺したアメリの大きな胸が揺れ動き、さらにアメリの全身が真っ赤になった。

「ふっ、見られているだけで本当に君は感じるんだな。おかげで随分と呼吸が楽になった」
「そんな……それじゃまるでわたしが変態みたいじゃないですか」
「俺はそこまで言ってないぞ」

 楽しげに笑われて、またからかわれていたことを知る。

「もう! 勇者のイジワルっ」
「ロランだ」
「え?」
「勇者ではなく名前で呼んでくれ」

 真剣に見つめられ、呼吸が一瞬止まる。
 素っ裸でいることも忘れて、アメリは動揺のあまり目を逸らした。

「で、でも、わたしなんかが勇者を名前で呼ぶなんて……それに勇者だってわたしのこと聖剣の乙女って呼ぶじゃないですか」
「それは……君が俺の名を呼ばないからだ」
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