恋を知らない聖剣の乙女は勇者の口づけに甘くほどける。
「ごめんなさい……!」
「大丈夫だ。ずいぶんと楽になってきた」

 力強く抱き寄せられて、ロランの胸板に顔を預ける。
 跨って座ったお尻に硬いものを感じて、アメリは無意識に手探りでそれを確かめた。

「……っつ!」
「い、痛かったですか!?」

 とっさに腫れた部分から手を離すと、ロランは苦笑いを返してきた。

「安心してくれ。そこは別に怪我しているわけじゃない」
「え? じゃあ何が腫れて……?」

 言いかけてアメリは真っ赤になった。
 お尻の下にあるのはロランの股間だ。そうなれば腫れているモノはひとつしかないだろう。

「あ……ぅ……えと、その……」

 何をどう言ったらわからなくて、思わずしどろもどろに口ごもる。
 そんなときふいにマーサの言葉が蘇った。
 ロランはアメリに寸止めを食らっている。確かそんなことを言われたはずだ。

「あの……男の人って、その、我慢をすると辛いんですよね?」
「それは……まぁ大丈夫だ。あとでどうとでもしておく。男は自分で処理できるからな」

 何をどう処理するのか、アメリには皆目見当がつかなかった。
 だが本人が言うなら信じるしかないだろう。

「でもそうだな……」

 少し考え込んでから、ロランはなんだか意地悪そうな笑みを漏らした。

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