この契約結婚は依頼につき〜依頼された悪役令嬢なのに何故か潔癖公爵様に溺愛されています!〜
「見て、フレディ様と奥様よ」

 舞踏会の会場に着くと、二人は注目を浴びた。

 王太子のルードにより、アリアの悪役令嬢としての働きが世間に知らしめられた。

 王女のしでかしたことは王家の醜聞だ、と批判する者もいたが、ローズへの厳しい処分と、王位交代による変革に、多くの者は納得した。

 そして一人、悪評を背負っていたアリアには称賛が集まり、フレディとの結婚も祝福されるようになった。それでも、フレディに想いを寄せていた令嬢たちからは良く思われてはいないようで。

「どうやってフレディ様に取り入ったのかしら」
「あの貧乏伯爵家の娘でしょ?!」
「悪役令嬢の仕事って……。本当に男好きなんじゃなくて?」

 ヒソヒソと悪意のある言葉がアリアの耳に届く。

「――っ」

 フレディが声のした方にキッと睨もうとすると、アリアから制止される。

「アリア?! もう、悪意になんて慣れなくても良いんだよ?」

 心配そうに覗き込むフレディに、アリアはにっこりと不敵な笑みを浮かべた。そして、フレディの手に預けていた自身の手を、腕へとするりと回す。

「ご令嬢たちは、フレディ様と私が羨ましいようですわ。取り入った、というなら、あなた方も悪役令嬢になってみてはいかがかしら? まあ、そんなことで私たちの間に割って入れるとは思いませんけどね?」

 フレディの腕に絡みつき、アリアは噂をしていた令嬢たちに向けて言葉を放った。

「なっ――」
「ア、アリア?!」

 悔しそうに顔を歪めるご令嬢たち。フレディはポカン、と隣のアリアを見つめた。

「……フレディ様はそのままの私で良いと言ってくれました。悪役令嬢もきっと私の一部になっていると思うんです」

 少し恥ずかしそうに、でもいたずらっぽく笑ったアリアを、フレディが抱き上げる。

「ああ! 俺はどんなアリアでも愛しているよ!!」

 嬉しそうに、幸せそうに微笑むフレディに、アリアから初めてのキスが降り注いだ。

 舞踏会の入口で大勢がその光景を見守る中、わっと歓声が起こる。

「何やってるんだ、あの二人は……」
「まあまあ、幸せそうで良いじゃないですか」

 離れた所で見守っていたライアンとレイラは、幸せそうに笑う二人を見て、拍手を送った。

 すると、会場中からともなく拍手が起こり、二人は音の波に包まれ、もう一度、キスをした。
< 100 / 100 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:75

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

表紙を見る
表紙を見る
一人ぼっちの魔女は三日月の夜に運命の騎士と出逢う

総文字数/101,754

ファンタジー42ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

働きすぎのお人よし聖女ですが、無口な辺境伯に嫁いだらまさかの溺愛が待っていました~なぜか過保護なもふもふにも守られています~
  • 書籍化作品
[原題]慈善事業はもうたくさん!~転生聖女は、神殿から逃げ出したい~

総文字数/114,967

ファンタジー122ページ

表紙を見る
王太子の揺るぎなき独占愛
  • 書籍化作品
[原題]極甘王太子は寵姫の愛に陥落する

総文字数/183,161

ファンタジー261ページ

表紙を見る
表紙を見る

この作品をシェア

pagetop