この契約結婚は依頼につき〜依頼された悪役令嬢なのに何故か潔癖公爵様に溺愛されています!〜
「フレディ様。お庭に食事をご用意してローズ王女殿下がお待ちです。どうぞいらしてください」
ドアを開けると立っていたのは、王女であるローズのメイドだった。
「俺は結婚した身です……。こういうことはお断りすると告げたはずですが……」
事前に手紙を受け取っていたフレディは、丁重にお断りをしていた。しかしこうして、メイドが突撃してきてしまい、困惑を見せる。
「もう用意は済んでおります。王女のご厚意を無下にすると……?」
貫禄のあるそのメイドは、王女が小さい頃から付き従ってきた、古株のメイドだった。
「局長……」
どうしたものかと逡巡するフレディにスティングも何も出来ず、成り行きを見守る。
「あら、王女殿下は、他人の夫を呼び出して二人きりになってどうなさるおつもりかしら?」
古株のメイドの後ろから声が響き、一瞬、何事かと三人が固まる。しかしすぐにそちらに目線をやると、燃えるような真っ赤な髪の悪役令嬢が立っていた。
「アリア!?」
悪役令嬢姿で来るとは思っていなかったので、フレディは驚いて声を出す。
「我が主に呼ばれるのは光栄なことです。あなたこそ、何の権利があって……」
横槍を入れたアリアに、メイドはムッとしてアリアを問い正す。
「あら、王女付きのメイド長ともあろう方が、フレディ様がご結婚された相手をご存知無いのかしら?」
「ま、まさか……」
「はい。フレディ様の妻の、アリア・ローレンですわ」
「あの悪女のアリア・クラヴェル!?」
優雅にドレスの裾を持ち上げたアリアに、メイドはおののいた。
王女から汚名を着せられ、追放されたメイドのことなど、王女を始め、メイドさえもすっかり忘れている。ましてや髪の色が違うので、同一人物だとさえ思わない。ただ、「アリア・クラヴェルは悪女だ」という噂だけは知っていた。
「あ、あなたのような悪女なんかより、王女殿下の方が……!」
アリアの圧に押されながらも、メイドが食い下がる。
「あら、私をお選びになったのはフレディ様ですよ? ねえ、フレディ様?」
するりとフレディの横に行き、腕に絡みつくアリア。
「あ、ああ……」
呆気に取られていたフレディは空返事をする。
「局長が女に触らせた?!」
傍観していたスティングは、その光景に目を丸くする。
「そういうことですので、お引取りください。それとも、他人の夫を誘い出すような王女だと、噂が巡っても?」
「――――っ!!」
メイドに見せつけるようにフレディの腕に頬を擦付け、アリアは勝ち誇るように笑って見せた。
メイドは悔しそうに顔を歪め、拳を握ると、「失礼……しました……」と言って、踵を返した。
メイドが去るのを見届け、未だ呆然とするフレディに、アリアは妖しく笑う。
ドアを開けると立っていたのは、王女であるローズのメイドだった。
「俺は結婚した身です……。こういうことはお断りすると告げたはずですが……」
事前に手紙を受け取っていたフレディは、丁重にお断りをしていた。しかしこうして、メイドが突撃してきてしまい、困惑を見せる。
「もう用意は済んでおります。王女のご厚意を無下にすると……?」
貫禄のあるそのメイドは、王女が小さい頃から付き従ってきた、古株のメイドだった。
「局長……」
どうしたものかと逡巡するフレディにスティングも何も出来ず、成り行きを見守る。
「あら、王女殿下は、他人の夫を呼び出して二人きりになってどうなさるおつもりかしら?」
古株のメイドの後ろから声が響き、一瞬、何事かと三人が固まる。しかしすぐにそちらに目線をやると、燃えるような真っ赤な髪の悪役令嬢が立っていた。
「アリア!?」
悪役令嬢姿で来るとは思っていなかったので、フレディは驚いて声を出す。
「我が主に呼ばれるのは光栄なことです。あなたこそ、何の権利があって……」
横槍を入れたアリアに、メイドはムッとしてアリアを問い正す。
「あら、王女付きのメイド長ともあろう方が、フレディ様がご結婚された相手をご存知無いのかしら?」
「ま、まさか……」
「はい。フレディ様の妻の、アリア・ローレンですわ」
「あの悪女のアリア・クラヴェル!?」
優雅にドレスの裾を持ち上げたアリアに、メイドはおののいた。
王女から汚名を着せられ、追放されたメイドのことなど、王女を始め、メイドさえもすっかり忘れている。ましてや髪の色が違うので、同一人物だとさえ思わない。ただ、「アリア・クラヴェルは悪女だ」という噂だけは知っていた。
「あ、あなたのような悪女なんかより、王女殿下の方が……!」
アリアの圧に押されながらも、メイドが食い下がる。
「あら、私をお選びになったのはフレディ様ですよ? ねえ、フレディ様?」
するりとフレディの横に行き、腕に絡みつくアリア。
「あ、ああ……」
呆気に取られていたフレディは空返事をする。
「局長が女に触らせた?!」
傍観していたスティングは、その光景に目を丸くする。
「そういうことですので、お引取りください。それとも、他人の夫を誘い出すような王女だと、噂が巡っても?」
「――――っ!!」
メイドに見せつけるようにフレディの腕に頬を擦付け、アリアは勝ち誇るように笑って見せた。
メイドは悔しそうに顔を歪め、拳を握ると、「失礼……しました……」と言って、踵を返した。
メイドが去るのを見届け、未だ呆然とするフレディに、アリアは妖しく笑う。