この契約結婚は依頼につき〜依頼された悪役令嬢なのに何故か潔癖公爵様に溺愛されています!〜
 スティングからは明日には噂になっているから覚悟しろ、と言われた。

「はい……っ! その、昼間のキスが噂になっていて、フレディ様は悪女に夢中だと王城では噂になっているそうです」

 なぜか嬉しそうなアリアは横に置いておいて、フレディはがっくりとした。

「もうそんなに噂が……!?」
「潔癖で女嫌い。ローレン公爵家のフレディ様が悪女と結婚したこと自体、あっという間に情報が駆け巡りました。そんなフレディ様の噂なんて、瞬く間に広がるに決まっているでしょう」

 愕然とするフレディにサーラが厳しい声色で言った。

「通いのメイドさんが教えてくれたんです。彼女は王城のメイドさんと仲良しだそうで、魔法省で働く方に見られていたそうで……」

 恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに話すアリアに、フレディはムスッとした。

「ご自分の蒔かれた種でしょう?」

 グラスにワインを注ぎ終わったサーラが耳元でボソリと呟いた。

 キッとサーラを見れば、彼女はツーンとしている。

「可哀想に、リア。人前でこんな傷物にされてしまって……」
「傷物って……」

 大袈裟に嘆くサーラにフレディはジトリと彼女を見る。

「私、私、悪妻の役目を果たせたみたいで嬉しいです!!」

 二人の会話とはまたもや斜め上にアリアは喜んでいる。

「でもリア、あそこは開けた場所だから、魔法省の多くの働く人が目撃したと思うよ?」
「へっ……噂だけじゃなくて、実際に……?」

 サーラの言葉にアリアは動きを止めた。

「フレディ様とリアのキスシーンを多くの人が見てたってこと」

 そこまで聞いて、ようやく理解したのか、アリアの顔が赤く爆発した。

「わ、わわわ、私、何てことを!?」

 赤い顔を両手で覆い、慌てふためくアリア。

 そんなアリアを見て、フレディは愛おしさが募る。

「アリア、可愛い……」
「ふえ!?」

 フレディの突然の甘い言葉に、アリアは増々顔を赤くして飛び上がった。

「……フレディ様?」

 そんなフレディにサーラが釘を刺すように怖い顔で睨む。

「は、反省しているよ、サーラ」
「まったくです! 人前ではお控えなさいませ。リアが可哀想です!」

 両手を上げて降参する仕草を見せたフレディに、サーラは呆れたように返した。

「リア、悪いのはフレディ様だから、あなたは気にしなくて良いのよ」

 顔を赤くしてわたわたしているアリアに声をかけると、サーラはその場を後にした。

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