この契約結婚は依頼につき〜依頼された悪役令嬢なのに何故か潔癖公爵様に溺愛されています!〜

13.仕事……?

「あ、あああ、あの、フレディ様?」

 食事を終えたフレディと仕事を終えたアリアは二人の寝室にいた。

「どうしたの、アリア?」

(ど、どどど、どーしたもこうしたも……!)

 結婚してから寝室は一緒なものの、ベッドはアリアが使い、フレディは部屋の中央に置かれた大きなソファーで寝ていた。

 夜着に着替え、後は寝るだけなのに、アリアはベッドに腰掛ける形でフレディと並んでいた。

 髪を撫でながら、フレディが腰に手を回している。

(み、密着しすぎでは?!)

 されるがまま顔を赤くするアリアに、フレディは気にせず髪を掬っては甘い表情で見つめてくる。

「あの……誰も見ていないのに必要ですか?」

 甘い空気に耐えきれず、アリアが切り出す。

「誰が見てるかわからないよ」

 ヒソヒソと耳元で囁かれ、アリアは心臓が移ったのではないかと錯覚するくらい耳が熱くなる。

「な、なるほど?」

 納得してみせたアリアにフレディが満足そうに微笑む。

「ほら、仕事だよ、アリア」

「仕事」を盾にすることを覚えたフレディは、アリアに言い聞かせるように耳元で囁く。

 腰を寄せられ、彼の肩に顔を埋める形になってしまう。

「で、ででででも、私は今は「リア」の姿ですし、やっぱり……」
「この寝室は、誰も近寄らないから姿を見られる心配は無いよ。ただ、妻と過ごした形跡は残さないといけないからね?」
「な、なるほど?」

 先程、『誰が見てるかわからないよ』と言った口で、あっさりとアリアを納得させるフレディ。

 ドギマギしているアリアは気付かなかった。

「じゃあ、寝よっか?」

 ベッドの中に手を滑らせたフレディを見て、アリアはやっとお仕事が終わったと息を吐く。

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