この契約結婚は依頼につき〜依頼された悪役令嬢なのに何故か潔癖公爵様に溺愛されています!〜
 痛む心に問いかけるも、アリアには覚えがない。

「それから君とはたまにあの庭園で会っていたんだよ」
「え?」
「あの、魔法省の塔の下の庭園、あそこを君が手入れしていたんだ」
「………………」

 フレディの言葉にピンと来ない。

(きっと王女殿下付きだった頃だと思うのだけど……)

 フレディの言うことが正しいならば、それらを全部覚えていないのはおかしい。

 必死に記憶を辿ろうとするアリア。

「――――っ!」
「アリア?!」

 頭を押さえて倒れ込むアリアをフレディが反射的に支えた。

「大丈夫か?」
「はい……」

 ズキズキとする頭を押さえながら、アリアはフレディを見る。

「だから、俺は君にだけは触れられるんだよ」
「――――っ」

 突如甘い顔をしたフレディに、パッと顔を逸らしてしまう。

「薬の効果じゃないよ?」
「!!!!」
「アリアだからだよ?」

 顔が赤くなるのを止められないのに、フレディの甘い言葉も止まらない。

「わかった?」
「わ、わかりました!!」

 念を押すフレディの言葉に勢い余って返事をしてしまう。

 フレディはアリアの返事を聞くと、満足そうに笑った。

(え? え? え?!)

 まだ混乱するアリアに、フレディは笑みを深めて言った。

「アリア、愛しているよ」

(え、演技――――!!!!)

 アリアが昔、フレディを助けたことは覚えていないが、わかった。それでもこれは依頼された「仕事」だ。

 そう思うと、アリアの心は痛んだ。
 
< 47 / 100 >

この作品をシェア

pagetop