この契約結婚は依頼につき〜依頼された悪役令嬢なのに何故か潔癖公爵様に溺愛されています!〜
「どうして?」
「だって……悪役令嬢じゃないと、フレディ様のお役に立てません……」

 自信なさげに答えるアリアの肩をフレディはそっと抱き寄せた。

「フレディ様?!」
「君は、俺の隣にいてくれるだけで充分なんだよ。この前だって、令嬢たちを追い払ってくれただろ?」
「あ、あの時は必死で……それに、最終的に追い払われたのはフレディ様です……」

 近い距離で耳元に囁いてくるフレディに、アリアは話どころではなくなる。ドキマギしながらも何とか答える。

「アリア、俺の妻はアリアだと、愛人疑惑は否定した。だけど、悪役令嬢のアリアとメイドのリアを見られているのは事実だ」
「はい……」

 フレディの不名誉な噂を流させてしまったとアリアは落ち込んでいた。

「いや、俺が君に所構わずキスしたせいだから、落ち込まないで欲しい」
「!!」

 落ち込むアリアに気付き、フレディがフォローしてくれたが、赤面する内容だった。

(妻役だからってフレディ様と何度も……)

 嫌じゃない、むしろ心地良くて嬉しい。そんな感情を押し込め、アリアは赤い顔を横に振った。

「それで、俺の妻は君一人だと認知させるためにも、アリアにはそのままでお茶会に参加して欲しい」
「えっ……悪役令嬢の方ではなくてですか……?」

 フレディの要求にアリアは困惑する。

(悪役令嬢の方が離婚する時も都合が良いのでは……)

 自身の考えに胸をツキリとさせる。

「俺は、君が良いんだ、アリア」

 アリアの両手を取り、真剣な瞳で懇願するフレディ。

「でも、私は悪役令嬢じゃないと……」

 俯きそうになったアリアの顔を片手でそっと上向かせるフレディ。

「大丈夫。君は、そのままでも立派にやれるよ。悪役令嬢の振る舞いなんていらない。ただ君のままで俺の隣にいて欲しい」

 自分自身をこんなにも求めてくれるフレディに、アリアは涙が溢れた。

「私……私……」
「頼むよアリア、俺の妻として側にいて欲しい。俺は君じゃないとダメなんだ」
「それは――リアの方が演技しやすい、ということでしょうか……」

 フレディの言葉が嬉しいのに、アリアはついぽろっと不安を溢した。

 フレディは驚きで目を見開いたが、すぐに笑みに変えた。

「うん……。そうだね。そういうことで良いよ。アリア、「お仕事」だよ。受けてくれるね?」
「……はい……」

 アリアの涙を拭いながら、フレディは笑みを深めて言った。

 仕事としてならアリアも受け入れてくれると思ったフレディは肯定することにした。

(仕事だとしても、私自身を求めてくれて嬉しい……はずなのに……)

 
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