この契約結婚は依頼につき〜依頼された悪役令嬢なのに何故か潔癖公爵様に溺愛されています!〜

31.フレディの殺意

「フレディ様っ……!」
「アリア!」

 フレディはベッドの上のアリアを見つけると、一直線に飛んで来た。

「アリアっ……」

 フレディは引き裂かれたアリアのドレスと縛られた両手に気付き、眉をピクリと動かした。

「……何かされた?」

 自身のローブをアリアの肩にかけ、露になった肌を隠す。そして魔法で素早く縄を切った。低く、静かな声はフレディの怒りを表していた。

「だ、大丈夫です……フレディ様が来てくださったので……」

 言い切る前にアリアはポロポロと涙を溢した。

「怖かっ……た……」

 怖い顔のフレディは、泣きじゃくるアリアを前に、その身体を抱き寄せようとしたが、空中で手を止め、躊躇う。

「フレディ……様っ……」

 そんなフレディにアリアは迷いなく胸に飛び込んだ。

 震える身体でフレディの服をぎゅう、と握りしめて涙を流すアリアに、フレディは力強く抱き締め返した。

「なっ……何だ?!」

 吹き飛ばされ、一瞬気を失いかけたマディオは起き上がり、ベッドの方へ視線を向ける。

「……お前……殺してやろうか」
「ひいっっ」

 視線が合ったフレディの殺気に、マディオは情けない声を出して、その場に尻餅をついた。

「局長ー、殺人だけはやめてくださいよ〜」

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