この契約結婚は依頼につき〜依頼された悪役令嬢なのに何故か潔癖公爵様に溺愛されています!〜

33.汚名返上

「さて……すまなかったね、アリア嬢。今度こそ、マディオもローズも二度と君に関わることはないから」

 ローズに引き続き、気を失ったマディオが近衛隊に運ばれていくのを横目に、ルードは苦笑してフレディとアリアに頭を下げた。

「で、殿下! 頭を上げてください! その……私を信じてくださったのは嬉しいのですが、ローズ様は殿下の妹君です……よろしかったのでしょうか?」

 おずおずと、早口でまくしたてるアリアに、ルードは口元を綻ばせた。

「妹は性根から叩き直す必要があったしね。あんなのが王族だと、国民が可哀想だ」

 どこか寂しそうに、残念そうに笑ったが、しっかりと前を見据えるルードの表情は、王太子たるものだった。

「局長が無茶する前に殿下がいらして良かったですー」

 成り行きを見守っていたスティングがほっと息をつく。

「はは、お前も苦労するね」

 そんなスティングにルードが労いの言葉をかけた。

「というか……来るのが遅くありません?」
「だから、局長が光のごとく早すぎるんですよ」
「はは、すまないな。こちらにも手続きがあってな」

 アリアを自身に引き寄せると、フレディは二人をジトリと見る。スティングもルードも苦笑いで返した。

「まさか、王族の隠し間をこんなことに使っていたなんてな。見張りが撒かれるはずだ」

 ローズに付けていた見張りが最近、撒かれることがあった。ルードはそれを疑問に思っていたのだった。

「マディオは密かに王都に入っていました。時期から見ても、この部屋で王女と密会をしていたのでしょう」
「アリアのおかげで、早くに駆けつけられて良かった……」

 ぎゅう、とアリアを抱きしめ、フレディはアリアの首元のネックレスを撫でた。

 複雑に進む王城の中、アリアはフレディの魔法薬をポツポツと床に落としてきたのだ。

 マディオに見えないように、自身が歩く足元に一滴だけ落とす。すぐにその上をドレス姿のアリアが歩くので、マディオの目には入らなかった。

「あの庭から、真っ赤な染みが転々と続いていたからね。アリアの悪役令嬢の髪の色だ」

 ぎゅう、とフレディに抱きしめられ、アリアも安心する。

「フレディ様ならきっと気付いてくださると思っていました……」
「俺たち、二人の約束の絆かな?」

 はにかむアリアに、フレディはそっと顔を寄せて額を付け合わせた。

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