この契約結婚は依頼につき〜依頼された悪役令嬢なのに何故か潔癖公爵様に溺愛されています!〜
「局長~、所構わずイチャつくのやめてくださいよ~」
「イチャ?!」

 スティングが呆れた声で言うので、アリアは我に返り、飛び上がる。

 フレディがアリアをがっちりと抱きしめていたため、身動きがとれず、顔を赤くして手で覆った。

「アリア嬢、改めて我が愚妹が……王家がすまなかった。約束通り、君の名誉は回復させてみせよう」
「本当だろうな」

 アリアが恐れ多い、と恐縮するよりも先に、フレディはルードを睨み付けて言った。

「約束する」

 ルードは一息つくと、やれやれ、と顔を綻ばせて言った。

「まさかフレディにそんなに夢中になる人が現れるなんてね。君の魔法も久しぶりに見た気がする」

 ルードの言葉にスティングもうんうんと頷いている。

「余計なお世話ですよ……」
「優秀な悪役令嬢には、私も仕事を依頼したいくらいだ」
「えっ」

 不敵に笑ったルードの言葉に、アリアは条件反射で顔を輝かせた。

「アリアは俺の妻だから、もうダメです」

 そんなアリアを隠すように、フレディはアリアを抱きしめた。

「わかってるよ」

 ルードはやれやれ、と 息を吐いた。

「さて、一ヶ月後には王家主催の舞踏会がある。お前の嫌いな社交シーズンの締めくくりだ。もちろん参加するよね? 奥方と」
「はい。殿下がアリアの名誉を回復してくれた上で、そんな最高な妻を俺は娶ったのだと周囲に知らしめてやりますよ」
「楽しみだな」

 挑戦的なルードの目に、フレディも負けじと返した。二人は何だか楽しそうだったが、アリアはフレディの言葉に顔を真っ赤にしていた。

 
 それから帰路についたお屋敷ではライアンとレイラも心配して待っていてくれた。

 記憶を取り戻したことを二人に報告すると、驚いてはいたが、嬉しそうに笑っていた。

 レイラからは大丈夫かと何度も聞かれたが、アリアは不思議と前を向けていた。あんなに恐ろしくて押し込めていた記憶も、フレディがいるだけで心を強く保てた。

「アリア」

 色々な人への報告ですっかり夜になっていた。お風呂で一息をつき、夜着に袖を通したアリアは、ベッドの上でほっとしていると、フレディが部屋に入って来た。

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