この契約結婚は依頼につき〜依頼された悪役令嬢なのに何故か潔癖公爵様に溺愛されています!〜
「疲れてない?」
「はい……フレディ様は?」

 気遣わし気にアリアに目を細めるフレディに、アリアは胸が温かくなる。

「無理してない?」

 優しくアリアの髪を梳くフレディに、笑顔を作って首を振った。

「確かに、閉じ込めていた記憶は忌まわしくて恐ろしくて、思い出したくないと無意識に思っていたんだと思います。でもそれよりも、私はフレディ様との大切な想い出を取り戻せて良かったと思っています」
「アリア……」

 アリアの言葉にフレディの表情が甘く緩められる。

「あの庭は、今は魔法省の管轄で、俺の物と言っても良い。君に虹色の庭をプレゼントしたかった……ようやく、叶う。また、見に行こうね」
「……はい」

 フレディの規模の大きい発言に目を一瞬瞬いたアリアだったが、すぐに笑顔に変わった。

「アリア……愛している」
「へっ?! あ、あのっ……」

 突然の甘い言葉にアリアは飛び上がる。

「君からの告白の返事……まだだったからね」

 顔を真っ赤にするアリアにフレディは微笑むと、自身の唇をアリアの物に重ねた。

「フレディ様……私も……」
「うん、わかってるよ」

 蕩けた顔でアリアが言おうとしたことをフレディはにっこりと顔を向けると、再び唇を塞いだ。

「アリアが俺を選んでくれたら、存分にするって言ったからね」

 少し唇を離した所でフレディの意地悪な表情が覗いた。

 アリアは確かにそんなことを言われたな、と赤面する。

「もう仕事でも契約でもないから、君を俺の本当の奥さんにしていいよね?」

 フレディの言葉の意味に、アリアの心臓は破裂しそうなくらい跳ねた。

 ぼすん、とベッドに押し倒され、フレディに抱きしめられる。

「あんなことがあったのにごめん……。でも、もう君を俺だけの物にしておかないと耐えられない」

 眉尻を下げ、自分を気遣ってくれるフレディを見上げたアリアは、顔を真っ赤にしながらも、頷いた。

「フレディ様なら嫌じゃ……ないです。フレディ様じゃないと、嫌……です」

 恥じらいながらも言ったアリアの言葉を受け取ったフレディは、魔法で灯りを消すと、アリアに再びキスを落とした。
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