親愛なる森
「私はね……もし、そうだな、もし、彼女が慕っている“ハーヴェイ様”と本当の私が違う人間だと知ったらと思うと、怖いんだ」僕はよくわからなくて、なにが?と訊いてみた。
「私は人を愛する資格がないのではないだろうか。私は、愛がわからないんだ。人を愛するとは、愛されるとは、夫婦になるとは、共に生きていくとは、何もかもわからないんだ」
「何言ってんのかわからないけど。また頭冷やして考え直せよ。18の乙女の花盛りを踏みにじりたくなければな」
「申し訳ないが、1人にしてくれ」僕は書斎をあとにした。
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