悪魔先輩のプリンセス〜初恋は魔界の王子さま⁉︎〜
「なんのこと、ですか?」
心当たりがなくて、パチパチとまばたきをする。
地下の……氷?
思い出した。永遠の入り口にあった氷の中に、人形のような男の子がいたこと。
目を閉じて、呼びかけても動かなかった。
まさか、夜宮先輩のお兄さんだったとは、思いもしなかったけど。わたしが呪いを解くなんて大それたこと、できるわけがない。
「俺と契りを交わしてくれ」
「ちぎり?」
「花嫁になる契約だ。紅羽ではなく、俺と」
ピッと立てた人差し指に、小さな光が現れた。この赤色を知っている。
夜宮先輩と、恋の契約をしたときに見たものと同じだ。
「約束しただろ。大きくなったら、君をさらいに行くって。忘れたのか?」
ドクンと心臓の音が跳ねた。
ずっと憧れていた人が、目の前にいる。花嫁になってほしいと、告白された。
でも──。
わたしは、小さく首を横にふった。
「わ、わたしが今好きなのは……紅羽……先輩なので。王河さんとは、契約できません。ごめんなさい」
困ったとき、危ないとき。いつも助けに来て、そばにいてくれたのは先輩だった。
ぼんやりした憧れじゃなくて、好きという感情を初めて教えてくれた人。
下げた頭を戻したとき、王河さんは背を向けた。
「……紅羽が、嘘をついていたとしても、同じことが言えるか?」
心当たりがなくて、パチパチとまばたきをする。
地下の……氷?
思い出した。永遠の入り口にあった氷の中に、人形のような男の子がいたこと。
目を閉じて、呼びかけても動かなかった。
まさか、夜宮先輩のお兄さんだったとは、思いもしなかったけど。わたしが呪いを解くなんて大それたこと、できるわけがない。
「俺と契りを交わしてくれ」
「ちぎり?」
「花嫁になる契約だ。紅羽ではなく、俺と」
ピッと立てた人差し指に、小さな光が現れた。この赤色を知っている。
夜宮先輩と、恋の契約をしたときに見たものと同じだ。
「約束しただろ。大きくなったら、君をさらいに行くって。忘れたのか?」
ドクンと心臓の音が跳ねた。
ずっと憧れていた人が、目の前にいる。花嫁になってほしいと、告白された。
でも──。
わたしは、小さく首を横にふった。
「わ、わたしが今好きなのは……紅羽……先輩なので。王河さんとは、契約できません。ごめんなさい」
困ったとき、危ないとき。いつも助けに来て、そばにいてくれたのは先輩だった。
ぼんやりした憧れじゃなくて、好きという感情を初めて教えてくれた人。
下げた頭を戻したとき、王河さんは背を向けた。
「……紅羽が、嘘をついていたとしても、同じことが言えるか?」