冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 突然の甘い言葉に、香蓮の頬が桃色に染まる。

 玲志はそんな彼女の様子を見て満足そうに笑うと、年配の社長とその場をあとにした。

 (玲志さんにあんなふうに豪語したけれど、ひとりになると心細いな)

 立食パーティのため、あちらこちらでグラスを片手に談笑している姿を見かける。

 香蓮が知っているのは、玲志と一緒に挨拶を済ませた人だけだ。

 とりあえず緊張を緩めようと、バンケットスタッフからシャンパンを受け取り、さっそく一口飲もうとグラスを呷る。

 しかしアルコールの香りが鼻をかすめた瞬間、香蓮はとっさに口元を押さえた。

 (気持ち悪い。やっぱり私……体調が悪いんだわ)

 玲志には黙っていたが、香蓮は朝起きてから体が重く、あまり食欲がなかった。

 思い当たる節があるとするなら、このパーティの緊張からのストレスか、季節的なはやり病を移されたかだろう。

 「とりあえず、一度椅子に座って休もう……」
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