冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
玲志の妻として初めての晴れ舞台。その逆もしかりだ。
よって香蓮がこの場所を台無しにするわけにはいかない。
バンケットスタッフから水を受け取りじっとしていると、コツコツと足音が彼女に近づいてくる。
「やぁ、お嬢さん。どうしたんだい、気分でも悪いのか?」
聞こえてきたしゃがれ声に振り返ると、白髪交じりのロン毛の中年男性が香蓮の顔を覗き込んだ。
「おや、とんだ美人だな。どこかの奥さまかな?」
香蓮は見覚えのある顔に絶句する。
今目の前にいるのは、本来の婚約者である藤山だからだ。
言葉を失う香蓮を不思議そうに見つめていた藤山だったが、ふと思い出したように目を見開いた。
「君、飛鳥馬さんとこの娘さんじゃないか!」