冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
気づかれてしまった以上、もう何も言い訳はできまい。
腹をくくった香蓮は重たい腰を上げ、無理やり口角をあげる。
「藤山さま、ご無沙汰しております。飛鳥馬の長女、香蓮でございます。お元気でしたか?」
「ああ、やっぱり。私が見初めただけあるなぁ、年を重ねてさらに美しさに磨きがかかって」
藤山は香蓮のボディラインを舐めるように見たあと、くくっと喉奥で楽し気に笑う。
香蓮は下心しか感じないこの男が、何年も前から苦手だ。
久しぶりに再会し、より藤山の家に嫁ぐことにならずに済んでよかったと思う。
(早く話を切り上げて、場所を移動しましょう)
「いくら仕方がなかったとはいえ、香蓮チャンをものにできなかったことは悔やまれるよ」
藤山は香蓮にぐっと顔を近づけ、ニタニタと白い歯を見せて笑っている。
嫌悪感で押しつぶされそうになるがなんとか愛想笑いをしていると、急に彼は思い出したように「あっ」と声を上げた。
「香蓮チャン、いいことを教えてやろう。君の妹が僕の妻になる話が進んでるんだよ」