冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い


 「えっ、愛理ちゃんが?」

 まったく想像していなかった事態に、香蓮は言葉を失う。

 「ああ、あの子はまた君とタイプは全然違うが、とっても可愛いねぇ」

 藤山は宙を仰ぎながらニタニタと笑っている。

 (どうして? 玲志さんも、あんなにお金を出してくれていたのに、足りないってことなの?)

 考え込む香蓮を見て、藤山はふぅと大きく息を吐いた。

 「君、嫁いじゃってから本当に何も知らないんだねぇ。達夫さんねぇ、昔ASUMAでもめた社員と長い間裁判をしていて最近敗訴したようなんだよ」

 達夫が昔の社員と裁判をしていたとは、初耳だった。

 ASUMAで働いてた数年、彼の口からそのようなことを聞いたことも、話したこともない。

 「賠償金額も数千万みたい。しかも業績不振に、色んな支払いも追いついてなくて自己破産するしかないって言ってる。これは友人として見過ごせないじゃないか……ねぇ?」
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