冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
藤山に上手く言葉を返せず、香蓮は深刻な表情で黙り込む。
(あれもこれも全部、お父さんが招いた種……私は何度も忠告した)
このまま父親を見捨てたいという気持ちと、血の繋がっている娘としてこのまま実家が崩壊していく様を静観していていいものかと葛藤する。
すると突然、藤山は香蓮に距離をさらに詰め、彼女の肩に腕を回す。
「ふ、藤山さま、少し離れていただけると」
「辛気臭い顔しないでよ~、綺麗なお顔が台無しだよ。飛鳥馬家は僕が助けるから安心してよ」
気安く体を触られ全身の毛が逆立つが、昔からの知り合いかつ、これから実家を救ってくれる男を無下にできない。
何も言わず固まっていると、藤山は口角を上げ香蓮を覗き込んだ。
「ねー、日向くん冷たくない? 新婚さんなのに優しくされてる? 僕が内緒で可愛がってあげようか」
「本当にやめてください! 玲志さんはちゃんと大切にしてくれています……!」
今まで我慢していた香蓮の限界が来てしまい、はっきりと藤山に物申す。
「私が好きなのは、玲志さんただひとりです。他の人を見ようとも思っていません」