冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
思ってもみなかった玲志の言葉に、香蓮の頬がじわりと熱くなる。
「それに人に意見する香蓮を見たのも初めてだった。強くなったんだな」
「玲志さん……」
(たしかに玲志さんの言う通り、今までだったら圧倒されて何も言えていなかったと思う)
だが玲志を悪く言われたり、玲志との仲を邪魔する者に関しては耐えられない。
それは香蓮にとって玲志がかげがえのない存在だから。
「玲志さんが大切にしてくれるから、私も自信が少しだけ持てるようになったんだと思います。ありがとうございます……」
照れながら言葉を紡ぐ香蓮を愛おし気に見つめ玲志は、彼女を優しく抱きしめる。
「もっと自信をもっていい。君を蔑む者はもういないんだから」
「はい……」
玲志が指す“蔑む者”とは飛鳥馬家のことだろう。
玲志は香蓮と飛鳥馬家の接点を持たなくていいと暗に言っているのだ。
(私は変わったの。もう飛鳥馬家の香蓮じゃない。どれだけお父さんたちにひどいことをされたか思い出そう……)
玲志が飛鳥馬家のことをどこまで知っているか分からないが、自分からは何も言うまいと香蓮は思った。