冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
家族
あれから一週間。
香蓮にとって大きな出来事があった。それは玲志の個人秘書のケガが完治し、現場復帰を果たしたのだ。
香蓮がそのまま居座る選択もできたが、もともとの個人秘書の面子を立てるためと、体調不良が続いていたのを理由に元の生活に戻る方向になったのだ。
「香蓮。何かあったらいつでも連絡してくれ。夜にでも俺から電話するから」
「分かりました、玲志さん。お電話楽しみにしていますね」
今日は玲志が結婚して初めて、二泊三日の地方出張で家を空ける。
ふたりは玄関で会話を交わし、当然のように甘いキスをした。
どちらとも名残惜しくしばし見つめあっていたが、玲志から思い切って彼女に背を向ける。
「じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃいませ。玲志さん」
ばたんと扉が閉まり彼の姿が見えなくなると、香蓮は悲しい表情でくるりと踵を返す。
「寂しい。もう玲志さんに会いたいわ……」