冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 職場でも家でも一緒だったので、玲志と丸二日離れて過ごすというのは香蓮にとって果てしなく感じる。

 しかし子供のように駄々をこねるわけにはいかないので、なんとか見送るまで明るく振舞ったのだ。

 SKMコーポレーションの手伝いを機に習い事も辞めてしまった香蓮は、玲志に家事をさせてほしいと頼んでいた。

 元々飛鳥馬家で家事代行サービスを運営していたというのもあり、彼女も家事や料理が得意なのだ。

 玲志も香蓮の希望を尊重し、すでにハウスキーパーの利用を停止していた。

 「なにこれ……すごく気持ち悪い……」

 玲志が家を出てしばらく水場を中心に掃除をしていた香蓮だったが、ふいに激しい吐き気に襲われる。

 急いでトイレにかけこみ、気分が落ち着くまでその場にしゃがみ込む。

 最近めまいが頻発したり、体が重かったりしていたが嘔吐するのは初めてでさらに不安が大きくなる。

 現場復帰した個人秘書の引継ぎがあり、彼女はまだ病院を受診していなかった。

 風邪のような喉の痛みや鼻水があるわけでもなく、起きている症状がなんの病気なのかまったく見当がつかない。

 一旦、気分が落ち着いた香蓮はスマホで自分の症状を調べてみる。

 「……え? 妊娠初期症状?」
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