冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 香蓮はメッセージを送ると、やや遅れて【もちろん。今晩話そう】と連絡がきた。

 出張先では忙しくなると玲志が言っていたのを思い出し、すでに出勤しているのだろう。

 約束を取り付けた香蓮は安心し、身支度を始める。

 昨日産婦人科の医師から、子供の心拍が確認できたので、区役所に母子手帳を受け取りに行くようにと助言されたのだ。

 香蓮は気持ちを弾ませたまま、笑顔でパジャマを脱ぎ捨てた。



 それから数時間後。無事に区役所で母子手帳を受け取った香蓮は、肩から下げていたバックに目をやる。

 彼女の視線の先には、区役所で母子手帳と一緒に受け取った、マタニティマークと言われる妊婦と子供のイラストが描かれたキーホルダーが取付けられている。

 これは公共交通機関で周囲が妊婦に対して配慮を示しやすくするものらしい。

 お腹がまだペタンコの香蓮は妊婦だと気づかれにくいが、つわりと眩暈がとてもひどい。

 移動中、万が一何かあったときのためにと、身に着けると決めたのだ。

 (スーパーに寄って帰ろう。食べられるものを買いだめておかなくちゃ)
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